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2012年11月

2012年11月30日 (金)

173 「非選抜アイドル」の仲谷さんが教えてくれたこと~幸せは他人が運んでくれる

何という本に書いてあったか、忘れてしまったが、こんなことが書かれてあった。

「自分に幸せを運んでくれるのは、いつも他人だ」というのである。

私たちが「うれしい」とか「幸せだ」とか感じたときのことを思い出してみよう。その「うれしさ」や「幸せ」は、自分以外のだれかがもたらせてくれたのではないか、というのだ。

友達が自分のことをほめてくれたら、すごくうれしくなる。友達のおかげである。

君が入試に合格できたとする。確かにそれは君ががんばったからだけど、やはりそこには、君を選んでくれただれかがいたから、その幸せがあるわけだ。

先日、AKB48の仲谷明香さんが書いた「非選抜アイドル」(新書)をとても楽しく読んだ。この本を読むと、あらためて「幸せというのは他人が運んでくれるんだなあ」と感じた。この本の内容を少し紹介してみたい。

仲谷さんは、小さいときは東北の盛岡で生まれ育った。自由奔放に育ったのだが、七歳の時、両親が離婚して千葉県に引っ越してきた。

仲谷さんは慣れない環境の中で、家に閉じこもりがちになってしまった。そんな仲谷さんを助けてくれたのはアニメだった。仲谷さんは夢と希望があふれるアニメにどれだけ救われただろうと述懐している。

「自分がアニメに救われたように、私もアニメを通して誰かを救いたい」と仲谷さんは考えるようになった。そして声優になりたいという夢をもつようになった。

しかし、中学生になっても仲谷さんはなかなか学校に行けない日々が続いていた。仲谷さんのお母さんが声優の専門学校に通わせてくれたが、学費が高く、途中でそれもやめざるを得なかった。

久しぶりに中学校に行ったある日、「あっちゃん」という、仲の良かったクラスメイトが、アイドルグループに入ったという話を友達から聞いて驚く。いうまでもなく「あっちゃん」とは前田敦子さん、アイドルグループとはAKB48のことである。

そこで仲谷さんはAKB48のことを調べてみた。すると、AKB48とは、ただ単にそこでアイドルとしての活動をするのが目的ではなく、将来的にもっと大きな夢をかなえるためのグループだということがわかった。たとえば、ほとんどのメンバーは歌手や女優になる夢をもっていたりする。

仲谷さんは、「AKB48に入れば、私も声優になれるかもしれない!」と思うようになった。

仲谷さんは、オーディションにチャレンジし、そしてめでたく合格し、AKBのメンバーとしての活動を始める。ダンスや歌のレッスンなど、プロとしての厳しさを思い知るようになる。それでも、トレーニングを積み重ねた後の公演に、達成感を感じるようになる。

そんな仲谷さんには苦手にしていることがある。それはみんなもよく知っているように「総選挙」をはじめとする人気獲得競争である。でも、中谷さんは「人気を得る」ことに一生懸命になれなかった。

仲谷さんは悩んだ。人気獲得競争から逃げ出せば、いずれAKBでやっていけなくなるかもしれない。

仲谷さんは一つの結論を出した。AKBの基本はあくまで「公演」なのだ。公演のことだけを考えるようにしよう、と。

仲谷さんは、目の前の「公演」に気持ちを集中させることにした。人気獲得活動はどうしてもできなかったが、踊りと歌にがんばることなら、どこまでもできた。そう考えて一層努力を続けていった。自分のパートだけではなく、見よう見まねで他のメンバーの歌や踊りもできるようになっていた。

すると、AKBのメンバーのうちのだれかが、病気やケガなど公演に出られなくなったとき、その代役を臨時に勤めて穴を埋めるということもできるようになった。

自分がすべきことに一生懸命に取り組む姿はだれかが見てくれている。

仲谷さんに外部の芸能プロダクションから移籍の声がかかった。AKBのメンバーにとっては、外部の芸能事務所に所属することが、一人前の芸能人として活躍するための必須条件なのだ。でもこんな話は選抜メンバーならまだしも、仲谷さんのような「非選抜メンバー」には夢のような話だった。

仲谷さんに声をかけた「Mousa」という芸能事務所の経営者は、「僕は長く芸能人としてがんばり続けられる人と一緒に仕事がしたい。それには努力が不可欠だから、それができるあなたに声をかけた」と語ったそうだ。

地道な努力が実を結んだと感じた仲谷さんは、その後も公演のトークの下準備をはじめ、公演を大切に考えた努力を続けていく。

すると、声優を目指している仲谷さんに、大きなチャンスを運んできてくれた人がいた。「もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの『マネジメント』を読んだら」の作者の岩崎夏海さんである。岩崎さんはこの本のオーディオブックの朗読者に仲谷さんを抜擢してくれたのだ。岩崎さんはもともとAKBの関係者で、仲谷さんが舞台裏で努力する姿を見ていたそうなのである。

このオーディオブックの朗読に一生懸命に取り組んでいると、さらに「もしドラ」のアニメの声優のオーディションも受けられることになった。これも岩崎さんが制作者に推薦したからだという。

実際のオーディションでは、一緒にオーディションを受ける人たちの中に、有名な声優さんたちがたくさんいることにびっくりする。アニメの世界では、有名な声優さんもオーディションを受けるのが当たり前なのだそうだ。

プロの声優さんたちと一緒に受けたオーディションが終わった後、仲谷さんは受かるという自信は全くなかった。AKBとしての多忙な生活の中で、オーディションを受けたことも忘れる日常に帰っていったのだ。

そんなある日、「合格」の知らせを聞く。名のある声優さんたちを押しのけて、なぜ自分合格したのか。後で理由を聞いてみた。

オーディション中に音響監督から「もっとこういうふうにやってください」という指導が入るのだが、その指導を一番謙虚に受け止めたのが、仲谷さんだからだという。「今は最初は下手かもしれないが、どんどんうまくなる可能性を秘めている」、そう制作サイドは判断したのだという。

そして今も活躍を続けている仲谷さんである。

この文章の始めに、「幸運は他人が運んできてくれる」ということを書いたが、もちろん、じっとしていれば幸運がやってくるわけではない。仲谷さんも悩みに悩んで、「今、自分ができること、すべきことは何か」ということを考え、努力を重ねていったのだ。そんな姿はきっとだれかが見てくれている。

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